元永慶太郎(監督)×上江洲誠(シリーズ構成)×岩佐岳(WHITE FOX代表取締役) 特別鼎談
◆時代劇×現代劇=刀語
――まずは、ベタな質問で恐縮ですが、小説を読まれてどの様な感想を持たれましたか?
- 元永
- 時代劇だからこうあらねばという要素もありつつ、随所に現代劇のテイストが盛り込まれていて、その二つがミックスされているのがとても面白かったです。 そして、読んでいると、ビジュアルが非常に浮かんでくる小説だなと感じました。だから、アニメにするのは凄く楽しいですよ。
- 岩佐
- コテコテの時代劇ではなく、良い意味での軽さが盛り込まれているんですよね。だから、時代劇小説ではあるのですが、とっつき難さは全く感じず、非常に楽しく読めました。
- 上江洲
- 12冊全部、一気に楽しく読めてしまうのも凄いですよね。それくらい面白い。 そして、先に進むにつれ、どんどん熱くなる展開があって引き込まれていきました。その盛り上がりを、アニメのシナリオでも表現出来ればと思っています。
◆王道の作品を目指して
――作品作りの方向性は、どの様なものになるのでしょうか?
- 元永
- これは、小説を読んでいて感じたことなのですが、読み終わった後、とても気持ちの良い爽快感があるんですよ。そこはこの作品の魅力だと思っています。 だからこそ、その爽快感をアニメを見ても感じてもらえるように、気を衒わずに真っ直ぐに作り、最終的には「笑って泣ける王道の作品」を目指して行ければと話しています。
――シナリオや絵コンテを拝見すると、小説に比べ会話劇的な要素が強く、より楽しめる内容になっている印象を受けました。
- 上江洲
- 会話を大事にしようというのもテーマの一つです。実際元よりほとんどが会話劇でもありますし、望むところです。テンポの良さ、ボケツッコミの妙を楽しんでいただける様にしたいですね。
- 元永
- そのあたりのさじ加減は、これまで上江洲さんとずっと一緒に仕事をしてきて信頼している部分でもあるので、非常に頼もしいです。
――シナリオ制作の進捗はいかがですか?
- 上江洲
- (9月現在)現在10話まで終わっており、今は11話の改稿作業中です。順調なように聞こえますが、僕が長々と引っ張ってしまい今日に至っています。スケジュール通りなら本当はもう終わっていなければならないのですが……。申し訳なく思う反面、時間を掛けた分、胸を張ってお見せできる、かなり精度の高いシナリオになっていると思います。
◆竹さんのイラストが動く!
――キャラクターデザインに関しては、かなり竹さんのイラストに近いデザインになっていますね。
- 岩佐
- 今回のキャラクターデザイナーである川田さんが、そもそも竹さんの大ファンなんです。『刀語』のアニメ化の話があがった際に本人から是非やりたいという話になり、選考の結果、最終的にお願いすることになりました。表情だけでなく全体的な雰囲気なども、竹さんの世界観を大事にしてくれているので非常に安心しています。
- 元永
- 我々もそうですし、きっとファンの方も、竹さんのイラストの印象が非常に強いと思いますので、竹さんのビジュアルの魅力と世界観を最大限表現出来ればと思っています。
――アニメ化に際し、かなり竹さんが設定的な面で協力されていると伺いました。
- 岩佐
- そうなんです。アニメ版の為だけの『刀語』の設定を、かなりご本人に描いて頂いています。 アニメを作る際、原作のイラスト集である『刀語絵巻』を参考にする事が多いのですが、竹さんの世界観で作りたいと思うと、あれだけじゃ足りないなあと思いました。それで「眠っている設定とかないですかね?」みたいなことをダメもとで講談社さんに伺ったら、竹さんご本人から「じゃあ描きますよ」的な事を言って頂けたそうです。これは非常にありがたい事でした。
――監督的に、印象的だった設定などありますか?
- 元永
- 否定姫の部屋のベッドですね。時代劇だけど凄いベッドが登場します(笑)。これは乞うご期待です。
◆制作スタジオ:WHITE FOX
――シナリオ作りと同様、アニメの絵作り全体にも時間をかけられているのでしょうか?
- 元永
- そうですね。今回は立ち上がりも早かったので、じっくり作れていると思います。 ただ、それ以上に、とにかく原画の上がりが早かったりしてビックリしてます。WHITE FOXさんには優秀なスタッフが揃っていますよ。
- 岩佐
- 現在、脚本は10話まで決定稿、絵コンテも4話まで決定稿になっています。随時原画も上がっていますので、制作的には順調ですね。だから、監督に早くコンテチェックを終わらせていただかないと、みんな仕事がなくなっちゃうんですからね(チラリ)。
- 元永
- うわ~、プレッシャーだな~…。
- 上江洲
- 絵コンテ自体も凄く面白いんですよ。この前、知人にコンテを読んでもらったんですけど、彼は何の予備知識もない人だったんですが、凄く面白かったと言っていました。読み終わった後に「次のはないの?」と言われたんですが、「いやいや、漫画の単行本じゃないから」と(笑)。
――監督から見て、WHITE FOXさんというスタジオはいかがですか?
- 元永
- 凄いです。とにかく仕事が早くて。でも、決して手を抜いたものが上がってくるわけではなく、ひとつひとつの精度が高いですし、上がってくる原画からも楽しんで描いている空気が伝わってくるんです。 自分も1カット1カットをじっくり見られるし、作画監督さんもキャラだけではなく、レイアウトから動きまできっちりチェックしてくれているので、こういう現場は、仕事への活力をもらえて面白いですね。
◆七花八裂、お見せします!
――では最後に、アニメを楽しみにされている小説読者の方々へ、一言いただけますでしょうか。
- 岩佐
- 全12話を毎月1話づつ放送、劇中では約1年間の旅を続ける『大河アニメ』となります。小説では無かった、アニメーションとしての動き・キャラクター達の声やBGMなども含め、少しでも楽しんでもらえたら嬉しく思います。
- 上江洲
- 僕は基本的に原作至上主義者なので、まずは原作ファンの方が楽しめるものを目指します。今回は、一つ一つ西尾さんに確認を取りながらシナリオ作りをしています。かなり事細かに、がっつりチェックをしてもらっています。原作ファンの方にも安心して待っていていただけると思います。
- 元永
- 何といっても『七花八裂』を映像でお見せできるというのが、最大のポイントの一つかなと思います。『虚刀流』も『零閃』も『千刀巡り』も、小説の中で皆さんが見たいだろうなと思ったものは、全てお見せします。ご期待いただければ嬉しいです。
◆最後に…?
- 元永
- キャラクターの技を考える際に、かなりゲームセンターに通ったんですよ。「邪魔だろうな~」と思いつつ、実際に人がプレイしているのをずっと観察していました。
- 岩佐
- 最初、昨年末に打ち合わせた頃、冗談で「先に対戦格闘ゲームにしといてもらえれば、色々参考に出来るよね」なんて話してましたね(笑)。
――じゃぁ、是非カプコンさんにお願いしましょう。
- 上江洲
- 作品的にはネオジオっぽいですが。個人的な趣味では、エコールさんにお願いしたいです! せっかくだから。
- 岩佐
- 小説の最後に技のコマンド入力も書いてあるし、メーカーさんとしてもやりやすいんじゃないでしょうか(笑)。
――ゲームメーカーさん! ご連絡お待ちしております!(スタッフ一同、本気で待っています!)