原作者:西尾維新先生インタビュー
――西尾維新アニメプロジェクト第2弾となる『刀語』ですが、小説ご執筆時のコンセプトは、どの様に考えられていたのでしょうか?
実は『刀語』は、TVで放送される1クールの連続アニメ的な物語というコンセプトで書いたんです。
ただ、単純な続きものではなく、常に最終巻という位の盛り上がりを演出する気持ちで毎巻書いていました。
あとは、『化物語』的な雑談をあまりさせないようにしようというのもありましたね。執筆原稿枚数に制限があったのも一因ですが、意図的に雑談要素を減らし、その分、キャラクターのカッコ良さ・バトルアクションなどに注力した作品であるのが『刀語』です。
――他作品との違いという点では、『刀語』は登場人物も多いですよね。全体として、キャラクター作りはどの様に進めていかれたのですか?
『刀語』は勝負の世界を書いているので、十二巻全てのおはなしにおいて、何らかの戦いが行われます。 基本的に戦いの中心にいるのは七花・とがめなので、まず『敵』を描くというところがキャラクター作りのスタートとなりました。
――では、今お話が出たメイン二人についてお伺いします。鑢七花は、徒手空拳で戦う無刀の主人公ですが、そのアイデアはどの様に生まれたのでしょうか?
時代物を書くにあたり、バトル的な要素を強くしようと思った時、純粋に強い主人公キャラを書こうと思いました。 12本の刀を集める話を書こうというテーマが先にあったのですが、それに対して「果たして主人公はどんな刀を持っている剣士なのか?」「どんな刀を持っていれば強いのか?」というのを色々考えたんです。 そして結果、無刀の剣士となりました。
――奇策士・とがめに関してはいかがですか?
これはここで初めて公開する裏話なのですが、人間シリーズに登場する敵役である策士・萩原子荻を書いている時に、策士の対となる存在“奇策士”というアイデアが生まれ、どこかで使おうと自分の中で温めていたんです。
そして、“強いけれど世間知らずな七花”と共に旅をする存在を書こうと思った時に、“弱いけれど知恵で乗り切るキャラ”を作ろうと思ったんです。
そこで、温めていたアイデアを具現化しました。それがとがめです。
ただ初期においては、制作陣の間で彼女は「奇策を練らない事で有名な奇策士」と呼ばれていました(笑)。
特に前半のとがめは「こいつ大丈夫か?」と思われがちですが、実は、構成的に、前半(1巻~6巻)を七花のバトルに使い、後半(7巻~12巻)をとがめの奇策に使おうという企みがあったので、物語全体としては二人ともキャラクターが立つ仕組みになっています。
そのあたりは、最後までご覧頂いて、楽しんでもらえたらと思っています。
――後半の頭である第七巻で描かれるとがめは、確かに非常に印象的でした。
個人的に、七巻に関しては思い入れも強いです。 バトルの盛り上がりも特徴的ですし、舞台に役者が揃った感もありましたし、後半の頭を飾るに相応しい内容になったと感じています。
――確かに、中盤までいくと、本当に色々なキャラクターが登場します。
全12話の中で色々なバリエーションの敵を出すというのは、コンセプトの1つとしてありました。
ただ、順番に強い敵が出てくるストーリー展開にすると12冊持ちそうになかったので、『色々なタイプの強さ』をどう書くかは、当時苦心した所ですね。
メインの二人はもちろんですが、それ以外のキャラクター達にも注目していただければ嬉しいです。
◆『刀語』は、決着をつける話
――早くも完成した『刀語』第1話、ご覧になっていかがでしたか?
これから皆さんにご覧いただくものなのであまり多くは語れませんが、何よりもまず感動したのは「竹さんの絵って動くんだ。動いても魅力的なんだ」という事実ですね。
あの衝撃は凄かったです。竹さんのイラストの魅力は静止画にこそあると思っていたので、WHITE FOXさんの技術とこだわりには驚かされました。
そして、メインテーマの一つであるバトルアクションも非常にカッコ良かったので、楽しみにしていただきたなと思っています。
――では最後に、これから『刀語』の小説やアニメに触れる皆さんに、メッセージをお願いいたします。
『化物語』に触れていただき、その上で『刀語』に触れていただく方も少なからずいらっしゃると思いますが、この両作は、全く違う対極の概念で書かれた小説です。
自分の中でも、これほどわかりやすく好対照な小説もない位です。
『化物語』は、言うなれば現状肯定の物語です。目の前にある状況を受け入れ、ポジティブな感情ではない形で「これでいいんだ」と考える人たちの物語です。
いわば決着をつけない話。阿良々木暦の忍野忍に対する付き合い方は、まさにその代表的な一例です。
そして『刀語』は、決着をつける話。
つまり、人が死に、誰かの人生が終わってしまうという物語です。
死を覚悟し、それに立ち向かう者達の、死までを含めた“生き様”を描いています。
だからこそ執筆時には、キャラクター達の散り際は、できる限り華やかにしようと思っていました。
言わば二つの作品は、「生」と「死」の物語です。
だから両作を同じノリで見るとビックリすると思いますので、『化物語』のアニメをご覧頂いたみなさまには、一度頭を真っ白にしてからご覧いただければ嬉しいです。
1月からの1年間、何卒よろしくお願いいたします。
――ありがとうございました。